制作秘話・ライナーノーツ
11thアルバム『MySOUL』制作裏話——「マジで倒れるかと」死線をくぐった魂の一枚
2024.10.27 ・ 読了目安 約8分 ・ 503 bad gateway
予備日を食いつぶす大難産、発表会当日の朝4時まで続いたデッドヒート、ITエンジニアがニヤリとするジャケットの「確信犯」な元ネタ、そして攻撃性と実験精神が同居する全11曲。完成発表会で語られた11thアルバム『MySOUL』の舞台裏。
メタルVTuberとして活動する伊達五十嵐(503 bad gateway)の11枚目となるアルバム『MySOUL(マイソウル)』。自身のYouTubeチャンネルで配信された「新譜完成発表会」では、これまで以上にシンプルかつ不穏(?)な輝きを放つジャケットを引っ提げ、リスナーへ感謝を伝えた。だがその笑顔の裏には、これまでにないほどの壮絶なトラブルと、ギリギリのスケジュールとの戦いがあったという。配信で明かされた本作の制作裏話と、収録楽曲に込められたこだわりを紐解く。
1. 予備日を使い切る「大難産」と、朝4時までの死闘 伊達五十嵐のアルバム制作では、通常トラブルに備えて1週間ほどの予備日(バッファ)が設けられているという。しかし今回の11thアルバム制作は「色々トラブル続きで、だいぶやばかった」と本人が振り返るほど過酷な展開になったとのこと。レコーディングのやり直しや、ミックスが思うようにいかないといった壁にぶつかり、普段なら食いつぶすことのない予備日を、今回ばかりは目一杯使い切ることになってしまったそうだ。
さらに、プロモーションの要となる「クロスフェイド動画」が完成したのは、なんと発表会当日の朝4時。「印刷物の手配やクロスフェイドの準備で、マジで倒れるかと思った」と語る通り、文字通りのデッドヒートを経て、本作はどうにか入稿・完成へと漕ぎ着けたのだという。
2. ITエンジニアならニヤリとする、ジャケットの「確信犯」な元ネタ 今作のジャケットに描かれているのは、どこか見覚えのある「クジラ」のようなキャラクターとロゴデザイン。リスナーから「SQL(データベース)っぽい」「Docker(ドッカー)のクジラのパロディでは?」と突っ込まれると、伊達五十嵐は「確信犯でした」と不敵に笑った。アルバム名『MySOUL』はデータベース「MySQL」と、そのイルカ/Dockerのクジラを掛け合わせた、エンジニア心をくすぐる仕掛けになっているとのことだ。
前作(10thアルバム『Next Round』)のリリース直後に「次はもうこれをやるしかない」と思いつき、タイトルやデザインの構想を固めたという。過去には8thアルバム『Stay agile』で、IT技術書の定番「オライリー」の表紙(動物の版画)をもじり、“アジャイル”にかけて「アジ(魚)」を描くパロディも披露しており、今回もそのパロディ精神が遺憾なく発揮されている。
3. 攻撃性と実験精神が同居する、収録楽曲のこだわり アルバムはボーナストラックを含む全11曲。配信内では、それぞれの楽曲に関するディープな裏話が明かされた。
『Death to false heroes』 イントロの爆発的な激しさから、アウトロの静けさへと落ちていく落差が特徴的な、アルバムのリードトラック。「リスナー自身がこの激しい言葉を吐いているような気持ちで聴いてほしい。出勤中に聴いて『やったるぞ』という気持ちになれる“パワー系出勤メタル”」と語る。
『G.A.S』 ガソリンやバイクの要素をベースにしつつ、実はエンジニア的なニュアンスやメンタリティの裏テーマも隠されている、歌っていて最高に楽しい一曲だという。
『呪詛(じゅそ)』 アルバムの中で一番最初にサビの構想が生まれながら、完成したのは一番最後という大難産曲。伊達五十嵐は「歌詞をよく読んでみてください。何一つ綺麗なことは歌っていません。タイトル通り、憎しみにまみれた歌です」と、そのダークな世界観を明かした。
『MySOUL』 アルバムタイトルを冠した、自身のメンタリティや魂をシンプルにぶつけた楽曲。サビ終わりの「たとえ地獄に落ちても」というフレーズがお気に入りなのだという。
『Tuna』(ボーナストラック・CD限定) 前作に続く「メタル以外で好き勝手やる」という実験枠。今回はロカビリーに初挑戦し、試行錯誤しながら作り上げたとのこと。
『Old school(5th aniv live)』&『Desire(Remaster)』 いずれも過去作のブラッシュアップ版。『Old school』はライブ音源で、原曲のフェードアウトに対し、最後までギターソロをやり切る熱い仕様に。音質面の不満を解消すべくリマスターされた『Desire』は、「攻撃性をむき出しにして圧がだいぶ高い」仕上がりだと語る。
4. リアルイベントでの「処方箋」特典と、今後の展望 本作のCDは、2024年10月27日の音楽同人イベント「M3-2024秋」でのリリースを皮切りに、神戸の「V-LIFE」、大阪の「音ケット」などのリアルイベント、およびBOOTH通販(デジタルデータ付属)での販売が予定されているとのこと。
CD購入特典として、ジャケット仕様の5cmステッカーに加え、前作で大好評だった「液体薬袋(処方箋の袋)」が今回も付属。イベント現地では、伊達五十嵐が自ら購入した「伊達の印鑑」をその薬袋に押して“処方”してくれるという、遊び心も用意されているという。
「売上はすべて次の楽曲制作に充てて、クオリティを上げていく活動費用に直結している」とリアルな台所事情を明かしつつ、近々MVの制作予定(「作りたくねえな、しんどいなという気持ちも半分ある(笑)」とのこと)もあるそうだ。死線をくぐり抜け、伊達五十嵐の魂と激情、そしてユーモアが限界まで詰め込まれた11thアルバム『MySOUL』。メタルファンも、ITエンジニアも、ぜひその爆音に身を委ねてみてはいかがだろうか。